The Chronicles of Asahi Press03

科学の名著

FIRST PUBLISHED IN 1980

サイエンスは、時代の認識の集大成である。

科学とは「知」の全体であった。 いま、それはおおむね「自然学Physics」をさすけれども、観察と実験に基づいて、自然に内在する法則を識る科学とは、いわば自然界の事物を自らの影・模造たらしめている永遠の「イデア」に至る、ひとつの方法であろう。じっさい「自然科学」は、近代に発生した価値の体系の中にあるのだ。科学の歴史とは、知のゲシュタルトとしてのエピステーメーの哲学的分析のための実験室ではないだろうか。
ここに、科学の古典的名著を、精緻なテキスト・クリティクを経て、日本語に翻訳しようとする試みは、次のようなひそかな願いのもとに行われる、<知>のアルケオロジーの実践である。
まず、哲学史、科学史に頻繁に言及され引用されながら、現実には手にする機会の得がたい原典を、日本語に移しかえて読者に提供する。これは古典文献学、アラビア学などの世界的な最新の成果を動員してはじめてよくなしうる作業であろう。
また、これら古典的名著を研究室の奥処から、広く<知>の今日の状況の中に解き放つ。こうして科学史のみならず、科学自身が変貌するための、いや転換しようとしている<知の全体>にはたらきかける、ささやかな梃子にこそなりたいと考えるのである。 (「科学の名著」創刊に向けてより)

Archive

  • 科学の名著〈1〉 インド天文学・数学集

    • 矢野道雄 編/矢野道雄 訳/林隆夫 訳/井狩弥介 訳

    『アールヤバタ天文学網要』アールヤバタ(476頃-550頃)の韻文の天文書。『リーラーヴァティー』バースカラ二世(1113生)によって書かれた算術書。他を収録したインド精密科学論集。

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  • 科学の名著〈2〉 中国天文学・数学集

    • 藪内清 編/橋本敬造 訳/川原秀城 訳

    『周髀算経』後漢の趙君卿が編纂。最古の宇宙論蓋天説が説かれている。『渾天儀・霊憲』後漢の張衡の著。中国古代第二の宇宙論渾天説が説かれている。他に『晋書天文志』等を収録。

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  • 科学の名著〈3〉 ロジャー・ベイコン

    • 伊東俊太郎 編/高橋憲一 訳

    『大著作』(Opus Maius,1267)ロジャー・ベイコンのすべての科学的知識の膨大な総合として、ここでは第四部「数学」の一部、第五部「光学」、第六部「実験科学」を収める。

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  • 科学の名著〈4〉 近代生物学集

    • 佐藤七郎 編/佐藤七郎 訳/檜木田辰彦 訳/大石圭子

    『植物発生論』Matthias Jacob Schleiden(1804-1881)。『動物および植物の構造と発育の一致に関する顕微鏡的研究』Theodor Schwann(1810-1882)を収録。

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  • 科学の名著〈5〉 中世科学論集

    • 横山雅彦編 青木靖三・横山雅彦訳

    『天体・地体論四巻問題集』Jean Buridan(1315-1358)。スコラのインペトゥス理論はアリストテレスの運動論の矛盾を指摘して、ガリレオの慣性法則の先駆となった。

  • 科学の名著〈6〉 ニュートン

    • 渡辺正雄 編/田中一郎 訳

    『光学』(Opticks,1704)ニュートンは光の粒子説を主張したが、R・フックやC・ホイヘンスが光の波動説を唱え、両者のあいだに論争がついた。それらの諸成果を収める。

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  • 科学の名著〈7〉 ギルバート

    • 三田博雄 編・訳/吉田忠 解説・注

    『磁石論』William Gilbert(1544-1603)イギリスの物理学者。主著『磁石論』において、近代科学の方法に不可欠な実験、観察を重視した点に彼の科学的態度の特徴がある。

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  • 科学の名著〈8〉 イブン・スィーナー

    • 伊東俊太郎 編/五十嵐一 訳

    『医学典範』Ibn-Sina(980-1037)。イラン系の哲学者イブン・スィーナーの『医学典範』は、ヒポクラテス、ガレノス等のあとをつぎ、さらにこれを発展させた。西方医学の基準書。

  • 科学の名著〈9〉 アルキメデス

    • 伊東俊太郎 編/佐藤徹 訳

    『球と円柱について』Archimedes(BC287-212)。古代ギリシアの天文学者、数学者、物理学者、技術者として有名なアルキメデスは、熱学や力学などにおいても独創性を発揮した。

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  • 科学の名著〈10〉 パストゥール

    • 竹内信夫 編/成定薫 訳/中崎昌雄 訳/山田隆子 訳/長野敬 訳/横張誠 訳

    『アルコール発酵論』Louis Pasteur(1822-1895)。発酵は生命の生活力の表現であるとし、発酵を微生物の生理という観点からとらえて、微生物学を創始した。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 1 インド医学概論 : チャラカ・サンヒター

    • 矢野道雄 編訳

    インドの伝統医学体系はアーユヴェーダと呼ばれ、今日なおその命脈を維持している。『チャラ・カサンヒター』は二千年にも亙って、アーユヴェーダを伝えてきた実用的医学書。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 2 ウィルヒョウ : 細胞病理学

    • 川喜多愛郎 解説/梶田昭 翻訳

    「すべての細胞は細胞に由来する」という基本思想を、栄養の理論、伝統病理学の批判、新生の理論という三つの構成の下に展開、現代病理学の礎石となった。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 3 近代熱学論集 : アンペール、クラウジウス他

    • 村上陽一郎 編集/杉山滋郎 翻訳/高田紀代志 翻訳/佐野正博 翻訳/橋本毅彦 翻訳/寺田元一 翻訳

    カロリック(熱素)についての学「熱学」のアンソロジーとして、ラヴワジエ、クロフォード、ランフォード、ハーシェル、ヘラパス、ジュール、クラウジウスを含む19論文を収録。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 4 ラヴワジエ : 化学原論

    • 坂本賢三 編集/柴田和子 翻訳

    従来の化学の誤りを正すべく著され、第一部「質量不変の法則」、第二部「元素は化学分析の到達した現実的な限界」等、化学の新しい体系を示し、化学の方向を規定した革命の書。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 5 ラマルク : 動物哲学

    • 木村陽二郎 編集/高橋達明 翻訳

    動物分類の根本的問題と進化現象について、生命論と生理学について、心理現象の生物学的研究について等、ダーウィンに先立ち進化論学説の創始をなす著作。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 6 ドルトン : 化学哲学の新体系 他 

    • 村上陽一郎 編集/井山弘幸 翻訳

    気象学、気圧計・温度計などの観測機械、気体の性質等多岐に亙る研究から、「化学哲学の新体系」「色覚に関する異常な事実」「水および他の液体による気体の呼吸について」等を収録。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 7 デカルト : 哲学の原理

    • 井上庄七 編集/小林道夫 編集/井上庄七 翻訳/水野和久 翻訳/小林道夫 翻訳/平松希伊子 翻訳

    第一部「人間認識の原理について」が形而上学を扱い、他の第二部から第四部までが自然学の全体系を示す。「物理的事物の原理について」「可視的世界について」他。代表作の初の完訳。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 8 ボイル : 形相と質の起源

    • 伊藤俊太郎 編/村上陽一郎 編/赤平清蔵 解説/吉本秀之 解説/赤平清蔵 訳

    『懐疑的な化学者』と並ぶ主著。物体の質的多様性、質的変化はスコラ派の曖昧な実態形相と質の理論に頼ることなく、粒子の組織と運動を用いて機械的に生成することをしめした。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 9 ベルナ―ル : 動植物に共通する生命現象

    • 長野敬 編集/小松美彦 翻訳/金森修 翻訳/鬼頭秀一 翻訳/松浦俊輔 翻訳/斎藤光 翻訳

    実験生理学を方法論的に基礎づけた。19世紀ヨーロッパ最大の生理学者の一人であるベルナールの研究の集大成。機械論、生気論を打倒目標とし、自らの立場を物理化学的生気論とした。

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  • 科学の名著 第Ⅱ期 10 ホイヘンス : 光についての論考 他

    • 原亨吉 編集/原亨吉 翻訳/横山雅彦 翻訳/安藤正人 翻訳/鼓澄治 翻訳/穐山恒男 翻訳/中山章元 翻訳/西敬尚 翻訳

    力学、数学、天文学、光学と広い範囲に亙るホイヘンスの業績の各分野から、代表論文を選りすぐった初のアンソロジー。『光についての論考』『衝突による物体の運動について』他。

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