レクチュア・ブックス
FIRST PUBLISHED IN 1978
アカデミズムと文学者の対話
いきいきとした講義=ドラマを体感!
現在の学問の先端は、それぞれの固有の論理によってあまりにも先に進みすぎてしまったのではないでしょうか。論理にうちかためられ、専門化され体系化された学問は、一般の読書にはとっつきにくく、しばしば対話不能のときもあります。本シリーズは、その体系の牙城をつき崩し、もう一度はじめから生きたことばによって再構成し、一方通行の講義ではない学問の、ドラマチックな側面をひきだそうとしました。従ってそれは誰にでも手にとれる、知的興奮に満ちた読物になっています。一流の学者先生による講師陣と、知的好奇心旺盛な当代の人気作家による全く新しい講義のやり方と、人間くさい学問のかたちを読者にお届けしたいと思います。
(「刊行にあたって」より)
Archive
-
哲学に何ができるか: 現代哲学講義
近代の主観-客観図式のパラダイム=物的世界像を超克する事的世界観とは何か。疎外論を越えて物象化論と共同主観性の地平に新たな世界観の構案を提起する廣松哲学体系の示唆。
詳細をみる -
ダ-ウィンを超えて : 今西進化論講義
- 今西錦司/吉本隆明
生物界にあるのは、棲みわけによる種の社会であり、生物も人類も自然というシステムの中に共存する。吉本隆明の鋭い質問に答えつつ、今西セオリーの創始者自らがその神髄を語る。
詳細をみる -
哺育器の中の大人 : 精神分析講義
- 岸田秀/伊丹十三
自他未分化の桃源郷にさまよう赤ん坊という人間の原点のイマージュが共同幻想としての社会を逆照射する。幻想の意味の解釈から自我の構造分析をへて、日本人の精神の有り様を究明。
詳細をみる -
マルクスを読む : 資本論講義
- 大内秀明/野坂昭如
マルクスにとって経済学は何よりも人間認識の学であった。〈商品-貨幣-資本〉という『資本論』の基本概念を闡明し資本主義的商品経済の科学的認識を通して身近な経済現象を考える。
詳細をみる -
生命をあずける : 分子生物学講義
- 渡辺格/小松左京
生物学の先端で、生命の起源と生体機構と脳のはたらきの誕生はどのように解かれようとしているのか?分子生物学の現段階を、相対論、量子力学の段階に転換するモメントを探る。
詳細をみる -
魂にメスはいらない : ユング心理学講義
- 河合隼雄/谷川俊太郎
遊戯療法、箱庭療法、アクティブ・イマジネーション等、心の病の時代である現代に、〈魂の医者〉が、言語の可能性を追求する詩人に、豊富な臨床例をもって講義するユング心理学の心。
詳細をみる -
宇宙との対話 : 現代宇宙論講義
- 小尾信彌/半村良
宇宙進化論の壮大な展望のものに、われわれはどこにいるのかという素朴な問いから、ビッグバンと膨張宇宙論まで、150億光年の彼方から、今日の天体物理学を講義する。
詳細をみる -
何が性格を作るか : 性格学講義
- 宮城音弥/津島佑子
精神病やノイローゼを、自然が行う実験と考え、これによって性格を分類し、こころという迷宮にふみ込む。作家と心理学者の眼差しを通し、文学や神話学、哲学との協働の可能性を問う。
詳細をみる -
本能のジュークボックス : 動物行動学講義
- 日高敏隆/戸川幸夫
ミツバチの色認識、イヌをからかうテンなど、様々な行動の発現機構が、確率論やゲーム・セオリーによる解析、赤外線スコープや微小電極を用いる実験などによって明らかにされる。
詳細をみる -
光があった : 地中海文化講義
- 下村寅太郎/小川国夫
光戯れる地中海に文明の交響詩がこだまし、アリストテレス自然学からケプラー、ガリレオ、ニュートンの科学への途がアインシュタインまで連なるのが見える。精神史の舞台を辿る講義
詳細をみる -
コンピューター・ウォーズ : コンピューター文化講義
- 西尾出/五木寛之
システム、プログラムの実際等を明らかにしつつ情報パニックの危険を予想し、文化の構造の基底部に張りめぐらされた迷路ともいうべきコンピューターと人間の共生のあり方を探る。
詳細をみる -
親鸞 : 親鸞講義
- 増谷文雄/遠藤周作
罪、苦、業とはなにか、そして本願、念仏、救いとは。親鸞の思想を追い、イエスやキリスト教の思想とひきくらべながら、<無義の義>や己証に結晶するに至る親鸞の到達点をうかがう。
詳細をみる -
ひとなぜ怒りを謳う : ナショナリズム講義
- 平岡昇/安岡章太郎
かつてデモクラティズムとパトリオティズムとは、ひとつの人格に同時に生棲できた。フランス革命にナショナリズムの祖型を探り、尊皇攘夷の運動から北一輝や三島由紀夫までを論考。
詳細をみる -
フィクションとしての裁判 : 臨床法学講義
- 大野正男/大岡昇平
価値、正義、真理、それらも、すべて<制度>に他ならない。文学裁判、事実認定、誤審等のテーマを追い一般理論や立法のための法律学ではなく、裁判という場での法の現実態を描く。
詳細をみる -
おもしろく源氏を読む : 源氏物語講義
- 角田文衛/中村真一郎
『源氏物語』を書きおおせた代償にさながら空蟬と化すことになった紫式部=藤原香子の生を、この時代の中におき、この物語に現われる大路や邸宅やあるいは人物のモデルを検証する。
詳細をみる -
古代人の伝言 : 考古学講義
- 森浩一/陳舜臣
遺跡とは何か。遺跡はさまざまな遺構を抱いて大地に密着して在る。いま、学問としての動揺を経験している考古学の先端を<考古癖>につきうごかされた作家の関心が横切る。
詳細をみる -
病める地球、ガイアの思想 : 汎気候学講義
- 根本順吉/新田次郎
地球史のスケールで自然や気候を、そして文明を観察すると、均一化を文明の原理と思い違えた結果が見えてくる。自然と生命とのハルモニアの途はあり得るか。
詳細をみる -
濁世の仏教 : 仏教史講義
- 中村元/水上勉
道元、良寛そして鈴木正三たちは、教団や制度に拠り宗学を講ずるのではなく、これらを捨てて、仏法と民衆の切点に自らの生き方を正法顕現の場と化し、仏教の、禅の身現を生きた。
詳細をみる -
快の打ち出の小槌 : 日本人の精神分析講義
- 佐々木孝次/伊丹十三
不快をとり除き快だけを与える母親、それは快の打ち出の小槌だ。フロイトやラカンの理論に訊ねながら日本人の精神分析を試み、不在の父を発見するにはどうしたらいいのかを考える。
詳細をみる -
サルの檻、ヒトの檻 : 文化人類学講義
- 西江雅之/吉行淳之介
人間は文化という”逃れられない檻”に入っているという、軽妙な語り口の座談の名手と多才な人類学者が、地球上のさまざまな人間の生き方をエピソードふうに語りあう。
詳細をみる -
手当ての航跡 : 医学史講義
- 中川米造/星新一
文化が病気をつくった。いま、治療のはじまりにあった<手当て>が恢復されるべきではないか。東西の医の道を巡り、現在の医療のあり方の根源を問う。
詳細をみる -
ピカソ : ピカソ講義
- 岡本太郎/宗左近
ピカソは全身で矛盾を表現し、時代と闘って<醜>と<美>を超えた。ピカソに無条件に感動し、ピカソに挑み、ピカソを超えることを自らに課した岡本太郎が、ピカソ伝説を覆す。
詳細をみる -
僕がアインシュタインになる日 : 相対性理論講義
- 佐藤文隆/光瀬龍
佐藤氏の基礎物理学の発想にSF作家光瀬龍氏が見えるイメージとして相対論を据えようとしており、初めて相対論に接する人にもわかりやすく現代の宇宙像を結ぶことに成功している。
詳細をみる -
エロスの美学 : 比較文化講義
- 加藤周一/池田満寿夫
美術の歴史を人間自身の自己発見の歴史として跡づけ、東西文化の差異も明らかにし、さらに現代芸術がさし示そうとしている方向を解き明かそうとしている。
詳細をみる -
嫌われるのが怖い : 精神医学講義
- 笠原嘉/加賀乙彦
精神科医のアイデンティティを問いつつ、病像の変化、日本人に特異にあらわれるノイローゼや精神病と文学創作の秘儀などを、精神医学を共通の基盤として論じる。
詳細をみる -
ヒトみな神の主食 : 食の文化誌講義
- 石毛直道/田辺聖子
文化人類学者が作家とかわす食文化講義。民族の生きざまが、宗教や思想であれ、その政治もみな大もとは食文化の発見であるという視点は人間存在の有り方を見直す契機となりうる。
詳細をみる -
音を視る、時を聴く : 哲学講義
- 大森荘蔵/坂本龍一
論理学から存在論にいたる哲学の全域を手中にし新しい哲学のホリゾントを拓かんとする大森荘蔵氏に坂本龍一氏が挑む。音の現場から聴覚の問題圏へ、世界の数学化を超える方法開示。
詳細をみる -
闇のなかの夢想 : 映画学講義
- 埴谷雄高/小川国夫
エジソン、リュミエールにはじまり、グリフィス、チャップリン、オーソン・ウェルズらの夥しい映画の群を潜って、19世紀の文学に代わる、芸術としての映画が拓いた地平を探る。
詳細をみる -
異次元が漏れる : 偶然論講義
- 秋山さと子/尾辻克彦
夢、意識、自己、世界について――異次元から漏れてきたもの=シンクロニシティあるいは偶然とは何か。超常現象を感じるには?ユング心理学と<こだわり>の作家が語り合う。
詳細をみる -
冷たいパフォーマンス : ポスト・モダン講義
- 清水徹/山口勝弘
<書物>、<イマジナリウム>という二つのコンセプトを系としてかならずしも重合し得ない「文学」と「現代芸術」の領域を渉猟し、ポスト・モダンの問題を照射する。
詳細をみる -
私は本当に私なのか : 自己論講義
- 木村敏/金井美恵子
書くことのはじまりから<私>を問う作家が、自己と他者の析出を、差異が差異を差異化する過程、として解く木村に訊ねる。精神病理学の先端が、現代哲学の基底に導かれる。
詳細をみる -
君は弥生人か縄文人か : 梅原日本学講義
- 梅原猛/中上健次
スケールのおおきな、豊かな感性を持つ作家に熊野とアイヌという古代の日本文化(神話)から、柳田国男、宮沢賢治を経て、現代までに及ぶダイナミックな文化論を展開する。
詳細をみる -
〈カン〉が〈読み〉を超える : 米長勝負論講義
- 米長邦雄/柳瀬尚紀
棋士道に題材を取る勝負論講義。将棋の世界を通した勝負カンとその形成判断は誤読の読みによって鍛えられた無限の回路を創る。将棋世界の矢倉はその好例である。
詳細をみる -
地球の尻尾を掴む : 文化人類学講義
- 青木保/青野聰
文化を創る過程で現われる認識の体系は、衣食住どれをとっても、文化が逆に認識の体系を機能的にある程度選択しえた所産である。南米での体験を交えながら説き明かす。
詳細をみる -
他界をワ-プする : 民俗社会講義
- 小松和彦/立松和平
「他界」――。「中心」に対しての「周縁」、「表」に対しての「裏」、「光」にたいしての「闇」。文化における《否定項》を媒体に、中世への新視覚を提示し、日本文化、現代文化を見直す。
詳細をみる -
「対話」はいつ、どこででも : プラトン講義
- 斎藤忍随/後藤明生
<人間が存在するとは対話的に関係するということである>というミハイル・バフチンの言葉を契機に、プラトンを全く新しい観点から読み直す。ポリフォニー=対話のパフォーマンス。
詳細をみる -
盤に臨んで燃える : 囲碁講義
- 趙治勲/中野孝次
勝たなければたちまちゼロになってしまう、ゼロか勝利しかない棋士というものの宿命の辛さ。若くして碁界最高の地位についた天才棋士と彼に魅せられた作家が語り合う囲碁の道。
詳細をみる -
血が酩酊するとき : 精神鑑定講義
- 福島章/村松友視
ヒトは関係性の中ではじめて人間として成立するという宿命を負っている。それと同じところに犯罪の起源もあるのではないか。昭和犯罪史を射ぬきその孤独な祝祭の秘密を探っていく。
詳細をみる -
神の意志の忖度に発す : 科学史講義
- 村上陽一郎/豊田有恒
「神の意思を忖度する」ことと科学精神の深いつながりを、一切の勝利史観を廃止、各文化と各時代の等価性を前提に論じ合い、科学革命、そして制度化された科学に説き及ぶ。
詳細をみる -
闇の都市、血と交換 : 経済人類学講義
- 栗本慎一郎/笠井潔
ポランニーとバタイユの交叉から、恍惚と戦慄の領域、暗い輝きの領域を真に照射するための企て。シオラン、ヴィトゲンシュタイン、あるいはマッハが、対話の中で核融合を開始する。
詳細をみる -
米が金・銀を走らせる : 江戸史講義
- 大石慎三郎/津本陽
江戸を中心とする経済圏域には金、京・大阪を中心とする経済圏域には銀が基本通貨として配されるという通貨構造。紀州家出身の治政以後西国の銀が反逆する。
詳細をみる -
中枢は末梢の奴隷 : 解剖学講義
- 養老孟司/島田雅彦
解剖というあくまで具体に係る視点から、形態・機能・発生・進化を貫く理論を解読する。形態学が認識論と遭遇する。死体を蝶番に解剖学者と小説家が結び合う。
詳細をみる -
電子のゆらぎが宇宙を囁く : i+fゆらぎ講義
- 武者利光/冨田勲
電子デバイスから発見された“1+f”ゆらぎは、生体情報から宇宙まで偏在する。神経電流を支配し、進化に関与し、音を音楽に変える怪の波動。ゆらぎ現象に解明のメスを入れる。
詳細をみる -
ヒト、空間を構想する : 都市+住居論講義
- 原広司/黒井千次
あらゆる人があらゆる瞬間に、空間を構想しているという原広司と、小説家・黒い千次が、語る空間論。人は自ら空間を構想しない限り、何ひとつ身動きできない。
詳細をみる -
街は無限に変容する: 臨床経済学講義
- 竹内宏/田中康夫
経済学を密室から解放し、様々な場所に、円環的探査を行う第一線の民間エコノミストと田中康夫が日本の風俗現象をひきよせ経済を語り合う。アジアの時代を視野に入れつつ日本を分析。
詳細をみる -
E・T・からのメッセージ: 地球学文明探査講義
- 平林久/宮内勝典
宇宙の知性体との交信を試みようとする世界第一線級の天文学者達が行っているSETI(地球外知的生命体探査)計画やNASAの対応を通し異星間コミュニケーションの可能性を探る。
詳細をみる -
突然変異幻語対談 : 汎フィクション講義
- 筒井康隆/柳瀬尚紀
筒井氏の創作方法から言語論・テキスト論を経て、新たな前衛文学の可能性についてまで、表現の行方を問う刺激的な試み。筒井氏による、マニフェス「超虚構宣言」として収録
詳細をみる