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 英語教育のプロ・磐崎弘貞、E-DICを使う(3)
 第3回 「AND 検索でいろいろな用例に触れる」

★E-DIC の検索インタフェイス
 今回は、E-DIC 初体験以来、いろいろとわかってきたことを報告します。

 まずはそのインタフェイスについて。
 E-DIC には検索語の入力ボックスが3つありますから、日本語・英語とも3語まで AND 検索ができます。たとえば、「顔を立てる」という表現を引くために、「顔」「立てる」と2つのボックスに入力して[見出し+例文]を検索すると、help (someone) save face など、4件の項目がヒットします。save face は「面目を保つ」というイディオムで、「面目を保てるようにしてあげる」→「顔を立てる」という発想になっていることがわかります。

 でも、AND 検索にはちょっとしたコツがいります。
 実は、上の方法だと、英文の訳が「彼女の顔を立てようと」などになっているとヒットしません。「立てよう」という文字列になっていないために、検索エンジンが日本語の活用までも考慮できず、拾えないわけです。

 そこで「顔」「立て」として AND 検索すると 14 例がヒットします。この場合は、以下の「顔を立てて」のような日本語もちゃんとヒットしているのがわかります。

 Be sure to make him look good today. /
 I  guess I'll have to. He's always doing something for me.
 「今日はあいつの顔を立ててやれよ」
 「しょうがない。いつもお世話になってますからね」

 なお、この例文では、先に出た save face というイディオムは使わず、make (him)look good という、簡単ながらも“斬れる”英語表現を使っていることに注目してください。

 このように、動詞とのつながりを引く場合には、日本語の動詞の語幹部分のみを入れるようにするといいでしょう。

★あたかもパラレルコーパスのよう
 英単語で AND 検索をする場合にも、同様の注意が必要です。
 例えば、get と around をそれぞれ入れて AND 検索すると、124 例がヒットします。ここには、
  get around to (doing) (~のための時間が取れる)
 をはじめ、多数の句動詞やそれ以外の用例が含まれます。

 検索結果をよく見ると、get だけではなく、gets、getting などもヒットしています。ただし、forget などは含まれません。つまり、E-DIC では前方一致検索が行われているということです。ということは、gets/getting はヒットするが、got/gotten などはヒットしないということになります。

 そこで改めて got と around を AND 検索してやると、先ほどはヒットしなかった49例が見つかります。たとえば、以下のような用例がありました。

 Sorry I haven't gotten around to helping you.
 (あなたを手伝うところまで手が回らなくてすみません。)

 「~まで手が回らない」と和訳してあるのもとても参考になります。

 E-DIC でこうした日本語・英語の AND 検索をしていると、その豊富な用例に次々と接することができ、あたかもパラレルコーパス(同一内容を2言語で表記したコーパス)を使用しているような錯覚を覚えます。

※「コーパス」=文章や話し言葉を一定の方針に従って収集し、コンピュータで扱えるようデジタル化して蓄積した言語データベースのこと。

★発信にこそ E-DIC は活用しよう
 ところで和英辞典について、中学・高校時代に「使用禁止令」が出ていたとの報告が、筆者の行ったアンケートでも少なからずあります。

 おそらく先生方は、英語を発信する場合に、辞書に頼らず自分の語彙を活用して使えるようになってほしいとお考えだったのでしょう。確かに、そのアプローチは限定された場面では役立ちます。
 しかし、それと同時に、E-DIC のような豊富な例文を引ける辞書を使って、英語から日本語へ、日本語から英語へと、自由に行き来しながら、場合によってはパラフレーズ(言い換え)思考を学びながら英語に接することも、大いに語彙力アップに貢献します。

 ぜひ、みなさんも E-DIC を引いて、その日英表現の小宇宙を体感してみてください。


(いわさき・ひろさだ)徳島県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。1996-97 年に英国バーミンガム大学研究員。現在、筑波大学大学院助教授。専攻は英語教育学・辞書学・コーパス言語学。主な著書に『英英辞典活用マニュアル』 『続・英英辞典活用マニュアル』 『新学習指導要領にもとづく英語科教育法』<共著>(以上、大修館書店)、『英語 辞書力を鍛える』( DHC )。連載は「辞書 GAKU 事始」( Asahi Weekly 紙第3週、オンライン版あり)、「和文英訳演習室」( 『英語教育』大修館書店、奇数月、共著)。