働きたくないイタチと言葉がわかるロボット

  • 働きたくないイタチと<br>言葉がわかるロボット
    働きたくないイタチと<br>言葉がわかるロボット
判型:A5判並製 / ページ数:272ページ / ISBN:9784255010038 / Cコード:C0095 / 発売日:2017/06/17

働きたくないイタチと
言葉がわかるロボット
人工知能から考える「人と言葉」

川添愛 著 / 花松あゆみ 定価: 1,870円(本体1,700円+税)

在庫: 在庫あり

なぜAIは、囲碁に勝てるのに、簡単な文がわからないの?
そもそも、言葉がわかるって、どういうこと?

立ち読み(PDF)

中高生から大人まで「言葉を扱う機械」のしくみと、私たちの「わかり方」を考える。

なんでも言うことを聞いてくれるロボットを作ることにしたイタチ村のイタチたち。彼らは、「言葉がわかる機械ができたらしい」といううわさを聞いては、フクロウ村やアリ村や、その他のあちこちの村へ、それがどのようなものかを見に行きます。ところが、どのロボットも「言葉の意味」を理解していないようなのです――

この本では、「言葉がわかる機械」をめぐるイタチたちの物語と、
実際の「言葉を扱う人工知能」のやさしい解説を通して、
そうした機械が「意味がわかっていると言えるのか」を考えていきます。

はたして、イタチたちは何でもできるロボットを完成させ、ひだりうちわで暮らせるようになるのでしょうか?

ロボットだけでなく、時に私たち人間も、言葉の理解に失敗することがありますが、なぜ、「言葉を理解すること」は、簡単なように見えて、難しいのでしょうか?

書評



流行に左右されない本質に読者を導く お話と講義が交互に連なる豊かな本

「人工知能に言葉を教えることは、「天然知能」が無意識にこなしている言語活動と深く向き合うことに他ならない。イタチたちの右往左往は、言語理解をめぐる人類の歩みそのものだ。最先端の話題を扱いながらも、込みいった話はうまくかわして、「何がどうであれば言葉がわかっているといえるか」という、流行に左右されない本質に読者を導く。花も実もある素敵な一冊」




吉野太喜さん『週刊読書人』2017年10月6日号




「この本は、できるだけ多くの人に読んでいただきたい。特に、現在の人工知能ブームに何となく恐れを抱いている方におすすめする。」




佐藤理史さん(名古屋大教授)(『北海道新聞』2017年8月27日)




「隙あれば怠けようとするイタチたちには、思わず呆れるが、同時に親近感も抱く。楽をすることが目的だったはずなのに、苦労することになるイタチたち。それは技術を発展させてきた人間の姿そのものだろうか」




内田麻理香さん『毎日新聞』2017年8月20日




「美しい挿画に寓話のようなタイトル、しかし中身はガチの言語学そして人工知能論である。(…)人工知能を通して明らかになる、言葉や人間について深い示唆。中高校生のみならず、大人にもおすすめしたい一冊」




伊藤亜紗さん『読売新聞』2017年8月7日




「ダチョウ倶楽部上島が「押すなよ、絶対に押すなよ」と言ったら熱湯風呂に押し込むのがお約束。しかしイタチのロボットにはこれがわからないだろう。」




岡ノ谷一夫さん(『週刊現代』2017年8月12日号)




「言葉というものの難しさ、奥深さを日々実感している身には、本書はとても興味深かった。(中略)最先端のロボットを研究することが、人間が言葉を扱うメカニズムを解明することにつながるという事実は、とてもスリリングだ。理系の考え方が、少しだけ身近になった気がする。」




南陀楼綾繁さん(共同通信配信 2017年7月23日~)




「言語学的な知見がじつにユーモラスで面白い。文章校正の点でも啓発的だ。」




小谷真理さん(『日本経済新聞』「目利きが選ぶ3冊」 2017年7月13日)




研究者たちが学習データの認識率を上げるアルゴリズムを作るために日夜努力していることは、人間の言葉を理解しながら仕事を代わりにしてくれる機械が次々に社会に生み出されることと同一ではない。一体何が違うのか、本書は教えてくれる。ひょっとすると、日本語という言語の学習過程にある小中高生の方こそが、この本からその違いを正しく受け取れるのかもしれない。




哲楽編集人・田中さをりさん哲楽




見てよし、学んでよし、笑ってよしと、三拍子が見事に揃った本である。すでに著者のファンである人も、そうでない人も、ぜひこの世界を存分に堪能してほしい。




澤畑塁さん honz




「ヒトの言語獲得は大規模連想学習によるものとは異なるものだ」という結論は動かないことを納得させてくれた。




shorebird「進化心理学中心の書評など」ブログ



目次

[目次]
第1 章 言葉が聞き取れること
音声と音素
機械による音声認識と、機械の「お勉強」
人間による「聞き取り」の習得
人と同じようにしないとダメ?

第2 章 おしゃべりができること
チューリング・テスト
「会話をする機械」の現状
ぼんやりしたやりとり、ぼんやりした理解
「真偽が問われる」レベルでの言語理解

第3 章 質問に正しく答えること
質問に答える機械
「言葉の世界」の中だけでの「理解」

第4 章 言葉と外の世界を関係づけられること
機械が画像を「認識する」
深層学習の基本を少しだけ
画像・動画の「表現力」の限界
外界の情報と「文の真偽」との関係

第5 章 文と文との論理的な関係が分かること(その一)
論理って何?
推論と意味理解
「論理的に考える」ことのじゃまになるもの
機械による論理的な判断:含意関係認識

第6 章 文と文との論理的な関係が分かること(その二)
文を推論パターンに当てはめる
文と文の類似度を手掛かりにする

第7 章 単語の意味についての知識を持っていること
「全部教えたらいいじゃない」
意味に関する知識の自動獲得
単語の意味は、周辺の単語で決まるのか?
句や文をベクトル化する

第8 章 話し手の意図を推測すること
意味と意図
曖昧性の解消
会話的含み
意図を伝えることの難しさ

終章 その後のイタチたち
「何でもできるロボット」の難しさ
では、私たち人間は?

あとがき
註と参考文献

著者紹介

  • 川添愛 かわぞえ・あい

    1996年九州大学文学部文学科卒業(言語学専攻)。2005年同大学大学院にて博士号(文学)取得。
    2002 ~2008年、国立情報学研究所研究員。2008~2011年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授。
    2012~2016年、国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。
    著書に『白と黒のとびら――オートマトンと形式言語をめぐる冒険』(東京大学出版会、2013年)、
    『精霊の箱――チューリングマシンをめぐる冒険(上・下)』( 東京大学出版会、2016年)がある。

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