体の居場所をつくる

  • 体の居場所をつくる
判型:四六判並製 / ページ数:312ページ / ISBN:9784255014081 / Cコード:C0095 / 発売日:2026/02/21

体の居場所をつくる

伊藤亜紗 定価: 2,090円(本体1,900円+税)

在庫: 在庫あり

★『体の居場所をつくる』刊行記念 伊藤亜紗×濱口竜介トークイベント「体と居場所と物語」2026年 03月31日(火) イベント&オンライン(Zoom)開催!

居場所は、私たちがどのように生きたいか、その価値基準そのものです。 摂食障害、ナルコレプシー、ALSなどの障害や病気の当事者。診断がつかない人、治療の道がない人、人種的マイノリティ―― 本書に登場する11名は、体に「問題」を抱えながら、日々の工夫の積み重ねで、どのように「体の居場所」をつくってきたのか。 一人ひとりから出てくる言葉は、ときに文学のようにファンタジックで、そこには、その人の何十年分かの人生が結晶のように凝縮されています。それに耳をかたむけ、ともに悩み、混沌とした状況を進む手すりとなるような言葉を探すために伴走する――そうして綴られた、生きるための究極の工夫とは?濱口竜介さん(映画監督)絶賛!プロローグ・目次を試し読み 「胃は海ほたる。Uターンして帰ってこれちゃう」――第二章 脂は敵だから好き ヨウさん ヨウさんは、四半世紀にわたり、摂食障害とともに生きてきたベテランです。「今では症状は手放している」と語りますが、一人暮らしをしていた大学生のときに始まり、就職、結婚、子育てといったライフイベントの傍らで、摂食障害は常にそこにある存在でした。

ヨウさんの摂食障害は、「過食嘔吐」と呼ばれるタイプでした。ときに胃が苦しくなるほど大量の食べ物を食べ、その後、手を突っ込んだり下剤を使ったりして食べたものを吐き出す。繰り返すうちに自分の意志で制御できなくなり、食べ吐きがやめられなくなってしまう症状です。ひどいときには一日三回食べ吐きをしていたと言います。

ヨウさんの回復に至る四半世紀の波乗りの経験は、前章の最後でぶち当たった「感じるとは何か」という問いに対して、本質的なことを教えてくれているように思います。なぜならそれは、ひとりの人が食べものを食べて「おいしい」と感じる力を失い、そして再び取り戻すようになるまでのプロセスだからです。
「僕は帝国主義者だから、取りにいくべき領土が無限に広がってる」――第四章 帝国主義者のまなざし シンくん シンさんは先天性疾患・脊髄性筋萎縮症(SMA)の当事者。二十四時間、入れ替わり立ち替わり約一〇人のヘルパーさんの介護を受けながら自立生活する大学院生です。認知能力や会話に問題はありませんが、筋力が低下しているため、体をほとんど動かすことができません。

両腕も祈るような姿勢で常に肘が折り曲げられており、介護者がその位置をときどき調整しています。「自分の体でさわったことがない部位があるわけですよね」と訊いたら、「そうだね、お尻とかさわったことない。足もとどかない」と早口で返事が返ってきました。

日頃のインタビューで私が一番知りたいのは、その人とその人の体の関係です。生まれてから現在までのあいだに、その人は自分の体をどのようなものとして捉えるようになり、それに対してどのような距離感で接するようになったのか。しかしシンさんにはそもそも体との関係なんてあるのか? その設定自体、あまりに自分の体を前提にしたものだったのかも……そんな不安に苛まれながらの訪問でした。
「体がキュッってなる」――第五章 電車の中のチマチョゴリ ユニさん ユニ・ホン・シャープさんは、在日コリアン三世として東京で生まれました。その後、二〇一七年にフランス国籍を取得。それ以降はフランスと日本を拠点にアーティストとして活動しています。

つまり、ユニさんは、元在日コリアンです。今回は、ユニさんの国籍とアイデンティティをめぐる旅について、身体論の立場から考えてみたいと思います。 え、国籍やアイデンティティは社会の問題じゃないの? 身体とは関係ないんじゃない?

私も、あるときまではそう思っていました。障害や病気こそ身体論のテーマであって、国籍のような社会制度的な問題は身体とは関係ない、そこから生じるアイデンティティの問題も、社会学か心理学の領分だ、と。

けれども、それは思い違いであることが分かりました。国籍やアイデンティティの問題は体の問題でもある、ということを身をもって経験する出来事があったのです。
本文(第四章)を試し読み全国の書店員さんに感想を寄せていただきました。 N=1の語りが記憶の引き出しをあける。語っているのは私ではないのに、どうしようもなく私がある/いる。だからもっと聴きたくなる。聴いてもらいたいと思う。私の体を震わせているこのなにかを。そこに未来がひらかれる。 ――本屋lighthouse 関口竜平さん そもそも「私」って、なんなんだ。いつだって思わぬタイミングで私の邪魔をしてくる、この体も「私」なのだろうか。不調や病、差別などによって体と自分の調和が失われた人々による、この体で「なんとかやっていく」ための対話と工夫を集めた、著者から11人への「体の贈り物」。コントロールできない。話も通じない。こんなに近いのに、遠い。自分の体をそんなふうに感じる日には、まずは対話から始めようと思う。 ――ON READING 黒田杏子さん 「体ってなんなんだ?」という問いが頭の中でぐるぐるした。体は、私より私を知っているのかもしれない。体の痛みやままならなさを抱えた人びとが教えてくれたのは、自分の体を俯瞰して見ること。体の機嫌をとりながら生きていけばいいのだ。 ――橙書店 田尻久子さん 伊藤さんの眼差しはいつも対等だ。深刻な病状にある方のインタビューも淡々と描かれている。解決策を探ったり、美談に落とし込むのではなく、いま生きている彼らそのままをつぶさに書く。インタビューで彼らから語られる「運動会みたいに食べてた」「図体のでかいピノキオ」など、症状の表現は実にユーモラスだ。
そんな表現が引き出された時、伊藤さんはとても興味深く、その言葉について掘り下げる。自分に起きてない症状や感情を想像するのは簡単ではない。でも伊藤さんと共に、思考をめぐらすことは、どこか未知の世界を探検する楽しさに似ている。知らない国へ、本を読んで旅する感覚になるように、まだ知らない身体をめぐる冒険。

世の中のすべての事柄に、理由があって、すべてが解明されているような気がしていた。まったくそんなことはない。まだまだ知らないことがたくさんある。そして、それを知ることは、誰かの「居場所」になることもある。
この本の扉には、必ず語られる方々のお名前が、手紙のように書き添えられている。
伊藤さんから、それぞれの人へ向けられた贈り物のような文章は、どこを切り取っても敬意と温かさで満ちていた。
――本とおくりもの ヒガクレ荘 小島有加さん
あなたにはあなたの、私には私の痛みがある。
同情するのでもなく、程度を比べるのでもなく、他者の痛みに連帯する。その在り方を教えてくれた本。
――1003 奥村千織さん
伊藤さんが出会った方の、さまざまな試行錯誤からたどり着いたそれぞれの生き方が、とても豊かに、十一通り以上に溢れています。
容易ではない道のりを、ご自身や体を「DV夫」や「うみほたる」、「帝国主義者」と軽妙に表現される語りから一人ひとりに魅かれ、私自身の、なおざりにしていた「私とその体」に、居心地の良い場所を見つけてあげたくなりました。
十一人の方への贈り物である伊藤さんの言葉は、とても柔らかな温かさでいて、輪郭はくっきりとした灯りのようです。火種を受け取り、いくつもの灯りが「居場所」からともることを想像します。
――早稲田大学生協ブックセンター 橋本歩さん
エピローグより絵・立体 資延美葵

著者紹介

  • 伊藤亜紗
    1979年生まれ。美学者。東京科学大学未来社会創成研究院DLab⁺ ディレクター、リベラルアーツ研究教育院教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(文学博士)。
    主な著書に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)、『どもる体』(医学書院)、『記憶する体』(春秋社)、『手の倫理』(講談社選書メチエ)、『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』(講談社学術文庫)、『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』(文藝春秋)など多数。
    第13回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞、第42回サントリー学芸賞、第19回日本学術振興会賞、第19回日本学士院学術奨励賞受賞。

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